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2008年02月17日 | 18:00 #
 
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ミュージックビデオ vs. 映画史 part.1 田中秀幸とハイスピードカメラ(後編)

 
ミュージックビデオ vs. 映画史 part.1 田中秀幸とハイスピードカメラ(後編)
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 ちまたに溢れる超スローモーションを生み出す高速度(ハイスピード)撮影映像。SMPTE(米国の映画テレビ技術者協会、の略だそう)が1948年に定めたところによると、秒間128コマ以上で最低3枚連写が可能であるのが「ハイスピードカメラ」とのこと。
 この技術を、というか映画という技術を成立させるには、一瞬にして光をフィルムに記録することができなければなりませんが、最も初期にそれを実現するために強力な光源として利用されたのはライデン瓶-つまり静電気の光。それでも現在のものに比べればまだまだ暗いもので、ましてカメラのレンズも今ほど発達していません。今と比較すれば5000倍も暗い環境だったといいます。
 いま主流のフラッシュで使われている、キセノン管を使ったストロボを開発したハロルド=エジャートンは、「ミルククラウン現象」を発見したことでも知られています。彼が自分のストロボスコープを用い、牛乳のしずくを落下させた様子を高速撮影してみたところ、着水したときのそれが王冠のように見えた、という奴です。雪印のCMでお馴染みですね。この発見は思わぬところに影響を及ぼしていて、チュッパチャップスのパッケージデザインでおなじみのサルバドール=ダリは、その不思議な造形が気に入ったのかミルククラウンをモチーフにした署名を使い続けました(参考:「ダリ - 科学を追い求めた生涯」)。

 もうひとつ高速度撮影といって忘れちゃいけないのが、スタンフォード大学を創設したリーランド=スタンフォードが写真技師のエドワード=マイブリッジと組んで撮影した馬のギャロップの連続写真。英語版Wikipediaでその写真を見ることができますが、これに続いてマイブリッジはライオンやチーター、人間などさまざまな対象の連続写真を制作しました。
 そして、これに触発されたフランスの生理学者ジュール=マレーは、引き金を引くと秒間12枚の連続写真を撮影可能な「写真銃」、一枚の写真のなかに運動の軌跡を記録するクロノフォトグラフといった技術を開発します。マレーの技術はまた、芸術の世界に影響を与えます。便器でおなじみのマルセル=デュシャンの絵画における代表作「階段を降りる裸体」ですが、これはマレーのクロノグラフィーの影響を受けたものでした。ご存知ない方もみればすぐにピンと来るでしょう。「デュシャンは語る」(ちくま学芸文庫)では以下のように語っています。
「私はマレーの本の挿絵で、彼がフェンシングをする人物や駆けている馬を、さまざまな運動を瞬間ごとに確定していくシステムによって示す方法を見ました(略)……それは公式的な、気取った感じがしましたが、でもおもしろかった。
 私はそこから『階段を降りる裸体』の制作のアイディアを得ました。」
 デュシャンはマレーの写真に、ピカソのキュビズムのように即物的な印象を受けたみたいです。

 いままで見えなかったものが見える。という驚きは、ビジュアルのインパクトも伴って科学だけでなく美学的な分野にも影響を与えたようです。それが巡り巡って今では映像を制作するに欠かせない技法のひとつになりました。
 森美術館で行われたベテランビデオアーティスト・ビル=ヴィオラの個展「はつゆめ」に筆者が訪れたのは07年のまさに元旦。そこで観た「グリーティング/あいさつ」は、ハイスピードカメラで捉えた「あいさつ」の瞬間に含まれる僅かなストーリーを極限までに引き延ばすといった作品でしたが、なにより筆者が圧倒されたのは、古代ギリシア風だかわからないけれどゆるやかで鮮やかな色を見せる衣服が波打ったり、たわんだりする様子のセクシーさで、以来「高速度撮影はセクシー」というのが持論になっています。

最後に一本、筆者のベスト・ハイスピード・ビデオを一本。Spike Jonzeの監督したWax / California。


 彼の作品を集めたディレクターズレーベルからのDVDでは、このおじさんの画がジャケットにも使われてますね。そういうわけでこと有名かと思いますが、当のアーティストのWAXはあんまり名前を知られていないような…… これだけのマスターピース(筆者比)を残しておきながらなんという不遇。

 今回はこれでお終いにして、次回(まだやりますよ)はタケイグッドマン vs. ストップモーションとかについて少々。よろしくお願いします!

Author : imdkm(忌ミヂクモ)
 
» part.2 : 前編

» 関連情報
imdkm weblog→"into your life, it will creep"


 
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